胆のう手術入院記 初日 ポテチ食ってられるのも今のうちだったが

ついにこの日がやってきてしまった。

3泊分の旅支度を小型スーツケースに詰め、「父ちゃんが居ない間、いい子にしてるんだぜ」とエルブレの頭を撫でて家を出て、予定通り午後一時前に今回ご厄介になる白い巨塔に着いた。

先ずは会計で保証金を納めた。入院の際に連帯保証人が必要なのだが、そんなもん近くに居やしないので金で解決したのだ。こんなお一人様だらけの今時、連帯保証人システムなど時代遅れも甚だしい。

次に、後で保険屋に提出する診断書を書いてもらうよう依頼をした。老後に備え昨年に保険を見直し1泊3,000円ぽっちしか出ない保険に切り替えたのだが、そのための診断書を書いてもらうのになんと8,800円も取るのだそうだ。しかも退院後3~4週間後のお渡しとのこと。なんとまあ強気なことだ。これじゃ保険がおりてもスズメの涙である。

受付での手続きが終わり、いよいよお世話になる病棟へ向かった。先ずは昔で言うところの「ナースステーション」で手首に名前とバーコードの書かれたバンドを巻いてもらった。

今日から3泊する部屋は第一希望の差額代のかからない4人部屋だ。

最安部屋とはいえ、占有スペースも清潔度も申し分ない。カーテンをシャーっと引けば落ち着ける空間だ。

TV放送を見るには1,000円のカードを買って刺さないといけないが、各種入院案内などは電源を入れただけで見れる。ほぼ唯一の楽しみと言ってもいい食事の献立もチェックできる。

恵方巻はメニューに無かった

手術は明日の11:15予定で今日は特に何も無いのでゆっくりしていてと言われた。お言葉に甘えてジャージに着替えてから院内をフラフラと散歩し、1階のコンビニにも行ってみた。

今日の夜中0時から絶食で、明日は9時から水もNGということなのでハメを外せるのも今日だけとポテチなんぞ買ってベッドでつまんでいたら、そこへふらっと管理栄養士さんがやって来た。今日は何も無いと看護師さんが言うので完全に油断しきっていたところへ。普段の食生活や間食についてポテチをチラチラ見ながら色々と聞いてきた。「普段は食わないんですけどね(汗)」と言いながら答えるインタビューはえらい長く感じた。あまりの間の悪さに、栄養士さんが去った後ですっかり食う気が失せて、結局ポテチの大部分は家に持ち帰りとなった。

栄養士さんが居る最中に若いイケメンの医師も現れ、「明日手術ですのでよろしく」と爽やかに言うだけでさっと消えた。おいおい、随分若いなと。外来のベテラン先生の執刀じゃねーのかよと、一気に不安になった。結局、大学病院特有の若手の練習台となる運命なのか。

気を取り直してテレビで冬季五輪でも見ようとタブレットを取り出した。テレビはカードを買うまでもなくこれで充分だ。

おあつらえ向きに無料WiFiまで飛んでいる。さすがに25年前の入院時とは時代の流れを感じる。

しかしどこでもDIGAがまるで繋がらない。TV放送も録画番組も共にダメだった。WiFiをやめてモバイル回線にしても状況は変わらなかった。

スピードは十分に出ているというのに。結局TVカードを買ってしまった。

やがて今回初の病院食が運ばれてきた。昔は各自が廊下まで取りに行ったもんだが、今や上げ膳据え膳で楽ちんだ。

私の場合、特に制限のない「一般食」で一日1,800キロカロリーだそうだ。一般食とはいえやはり味がうっすい。いかに普段味が濃いのかよくわかる。白米も消化を良くするためにわざと柔らかめにしているのだろう。これを3か月くらい食い続ければ痩せそうだ。

夕食も終わったら後は22:00の消灯までTVを観るくらいしかやることが無い。コロナ禍じゃなければ寅さんのように「ようあんた、どこが悪いんだい」と相部屋の人と他愛もない話でもするところだろうが、看護師からの指示もあって各自ピシャっとカーテンを閉め切っていてノーコミュニケーションだ。現在は基本面会もお断りのようで、うちの奥さんもこれ幸いと病院に来る予定は皆無である。

明日に迫る手術の緊張感にひたひたと押しつぶされながら、入院初日の夜は更けていったのだった。

ちなみにエルブレはオヤジが居なくても何も気にせず平常通りだったようだ。

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