5月23日(金)
「道の駅くるら戸田」の朝が来た。

静かな夜だった。

割とひんやりとした朝だったにもかかわらず、見るからに寝巻というか部屋着というか薄っぺらいカッコで道の駅のベンチに腰掛けた若いご夫婦が居た。奥さん?のヒザにはミニチュアダックスが大人しくちょこんと座っていたので、近所の散歩の人かな?と最初は思った。
やがて朝っぱらの道の駅の駐車場にJAFのトラックがやって来た。すると旦那?の方が「どうもー、こっちですー」という体で隊員を出迎え、何やら深刻な顔で話し込み始めた。

どうやらキャブコンのインキーでもやっちゃったのか、隊員は運転席側のドアの前にどっかと座り、延々と作業をしている。我が家のハイエースだったら原始的な造りなのでおそらくあっという間にガチャっと開けられそうなもんだが、今時のハイテクな電子装置相手だとJAFもきっとタイヘンなんだろうな。

朝食は昨日裾野の直売所で買っておいたサンドイッチだ。手作り感満点で素朴に美味かった。夜のツマミ用に家から持ってきたけど食うのを忘れていたQBBチーズも一緒に頂いた。
さて今日はもう家に帰るわけだが、ルートはどうしよう。せっかくだから東伊豆にも立ち寄るかな。
優雅に紅茶を二杯頂いた後でさあて出発するかという時点でも、まだJAFの隊員さんは全く同じ位置に腰をおろしたまんまで依然として作業をしていた。ご苦労様です。
先ずは修善寺方面を目指すが、

これまた大変な峠道だな。あぁ、思い出した。たしかに大変な道だったな。
戸田のT君の実家にお邪魔した時、普通なら「泊ってけ」と言われそうなもんだがなぜだか日帰りだった。その時、T君のお父さんが「修善寺まで道案内で先導してやっから温泉に入ってけ」と言うのでそうしたのだが、もうすっかり真っ暗になったこの峠道をお父さんは新米ドライバーかつ土地勘ゼロのS君に構うこともなく、あっという間に猛スピードで視界から消えて行き、「お父さん、はえーよ!」とS君は泣きながら追っかけていたっけ。「ポツンと一軒家」で、「〇〇さん家にオレが案内してやっから」と言う地元のジジイが、一歩間違えば崖下に転落しそうな細い山道を取材班を気遣うこともなく軽トラでさっさと先に消えていくシーンを観る度に、この時のT君のお父さんを思い出す。ちなみにお父さんオススメの「独鈷の湯(とっこのゆ)」に男3人でザブンと入ったのだが、

周囲の宿や道からモロに丸見えな湯だった。現在は何かと不適切ということなのだろう、入浴禁止となったようだ。
そんな思い出の峠道を悪戦苦闘しながらアクセルベタ踏みで上って行く。

こんなつづらおりを頑張って走り切り、思い出の修善寺に入った。ちょいと月ヶ瀬の道の駅を冷やかしてから北上し、今度は東伊豆を目指してまたしてもとんでもない山道をひたすら走る。

やっとのことで山を下り、海沿いの国道135号に出てホっと一息つく。そこから北上して目指すは日本のハワイだ。
今朝、戸田の道の駅で奥さんに「熱海でも寄って帰ろうと思って」とLINEすると、間髪入れずに「プリン買ってきて」と指令が下された。

「へい、わかりやした」とやって来たのは、「熱海後楽園ホテル」だ。
この「熱海プリン」とやら、なんでも巷では大流行で熱海駅前の店では連日大行列が出来ているそうな。ここのホテルなら並ばずに買えるらしいのだが、はたして如何に?

なんとガラガラ、というか客はワタシ一人。指令を見ながら商品を選ぶ際中も店のお姉さんの視線が一身に注がれて居心地が悪いったらない。

さあ、お土産もゲットしたところで、この旅ラストのグルメツアーに出よう。

市営の東駐車場にコンパスを停め、

熱海の街へと繰り出す。駅の方にでも行ってみようかとも思ったが、坂を上るのがかったるいので止めといた。

熱海には過去何度も訪れているが、ここ渚町をぶらつくのは初めてだ。

犬連れ、家族連れではあまり足を踏み入れないであろう、旧き良き昭和の時代の素敵で猥雑なこの雰囲気。「千と千尋の神隠し」の油屋の下の街のように、夕方暗くなってくるとネオンが灯って何とも妖しい街に変貌するんだろうな。

さてこんな中、ラストランチに選んだ店は、

「雨風食堂」さんだ。「あめかぜ」ではなく、「あまから」と読むらしい。
ガラっと入った瞬間、「カード使えませんよ!現金のみね!」と言う女将さんのチャッキチャキの声に出迎えられる。最初怒られてんのかなと思いきや、誰が入って来ても同じだった。単なるインフォメーションらしい。

何にしようか迷うくらいのメニューの中から何とか選び出し、しばし待つ。

店内を見渡すと、ガテン系の兄さんたちが圧倒的に多い。彼らの胃袋を満足させるのだろうから、期待はどんどん高まる。カウンターにはまだハタチそこそこな兄ちゃん二人が、「どこの現場?ホテル?」と女将さんに色々と聞かれては小さい声でボソボソと答えている。
やがてお待ちかねの、

アジフライ定食が目の前に運ばれた。素晴らしいこのビジュアル。メニューで謳っているいる通り、大きめのアジがどんと存在感を出している。大きいだけじゃなくとにかく分厚く、ふっくらしていて激ウマだ。小鉢類もどれも素晴らしく、ゴハンがどんどん消えていく。
感動しながら味わっていると、女将さんが「これ、サービスね」と何やらお椀をカウンターの兄ちゃんたちに出していた。若い兄ちゃんだから特別なんかなー、とちょいジェラっていると、

「はい、お客さんもサービスね!」と冷たいそばを振る舞ってくれた。
それだけにとどまらず、「これもよかったらどーぞ!」と、

デザートまで出してくれたのには参った。なんというホスピタリティだろうか。女将さん、大変ご馳走になり、ありがた山でござんした!
大満足で店を後にし、街をぶらつく。

ホテルの脇の駐車場にハイエースのバンコンが停まっているので駐車料金を見てみると、

20:00-8:00で500円。周辺はトイレもあるし泊まれるな、こりゃ。
国道135号沿いを歩いてみると、

かつては温泉饅頭を売っているお土産屋さんみたいなのばかりだったと記憶しているが、

店たちがすっかり様変わりしちゃって、インド料理やらトリコロールカラーやら洒落たラーメン屋やらフルーツパーラーやらになっていた。

熱海も随分と変わったものだ。

きっと変わらないのはこちらの「サンバード」さんぐらいでは?さすがは創業50年以上、ひときわオーラを放っていた。
さて腹も膨れたことだし、ぼちぼちのんびりと下道で帰るとするか。

本日の走行距離:162km
今回の総走行距離:327km
