3月22日(土)
「道の駅しまなみの駅御島」の朝が来た。

昨夜はポツンと貸し切りの、実に静かで暖かい夜だった。

道の駅の前を通る県道21号を渡ったすぐのところの「大三島藤公園」で朝一散歩だ。


園内には梅がキレイに咲いていた。

こちらにおわすは瀬戸内のジャンヌダルクこと鶴姫様だ。なんでも伝説上の人物で、1966年に彼女を題材にした小説が発表されるまでは、ここ大三島の人たちでさえ知らなかった存在だという。戦国時代に大三島に度々侵攻してくる周防の大内勢と激しく戦って散った勇猛な女傑だとかなんとか。これも大河で取り上げれば中々に面白そうなお人だ。


さて今朝は、

久々にお茶漬けを頂くことにしよう。

お茶漬けオンリーだと寂しいので、練り物アソートも併せて頂く。
車中泊の悩みのひとつに、牛乳パックの口が冷蔵庫の湿気にやられてブヨブヨになり注ぐ時にタレる、というのがあったのだが(我が家のエンゲル冷蔵庫だけ?)、

ダブルクリップで口をとめて冷蔵庫に入れとくとブヨブヨにならない、ということを今回発見した。

そうこうしているうちにOPENの時間になり、

魅惑の柑橘類が各種並び始めた。あーでもないこーでもないと悩んだ挙句、せとかを一袋追加購入させて頂いた。
さて今日はこの後はしまなみ海道をひとまず離れ、ひとつお隣の別の海道へと渡るのであまり暢気にしては居られない。

お世話になった道の駅を出発し、県道51号を南下する。



20分ばかり走って着いたのは、

宗方港だ。土曜の朝なので早く行かないとフェリーに乗れないのでは?と余裕を持って来てみたが、先客は誰もおらず拍子抜けだった。

バスの停留所みたいな古ぼけた事務所に入り、係のおばちゃまに色々聞いて切符を買った。なんと意表をついて最新型の自動販売機が待っており、各種QR決済も完備していた。なお、淡い期待のJAF割は無かった。

船が来るまでまだちょっと時間があるので、

港の奥の方へ散歩してみることにした。


この旅が始まってここまでずっと風が強い日が続き、そのせいか瀬戸内の海は細かく波立ち、ワタシの愛するあの湖のようなスローな海はまだ見れていない。

早くあの静かな海に逢いたい。
出航10分前に港へ戻ったが、

我が家の他にはクルマはおらず、ハンターカブが2台居ただけだった。

ここ宗方港では、赤い橋を渡ってから一度左に頭を突っ込み、バックで乗船すると先ほどオバチャマから説明を受けた。

若干緊張しつつ船を待つ。

やがてフェリーがやって来た。

無事バックで乗船し、およそ20分後、

無事に岡村島に上陸と相成った。
前々から訪れてみたかった「安芸灘とびしま海道」にようやく来れた。

ここは5個の有人島と2個の無人島が橋で繋がれていて、さっき上陸した岡村島だけが愛媛県で他は全て広島県の呉市になる。
いざ、とびしま海道ドライブスタート。

岡村島から中ノ島、平羅島と通過し、先ずは大崎下島に入ったすぐのところにある架橋記念公園とやらに寄って散歩してみよう。

平羅橋を渡ってすぐのところにあるはずが、どこにあるのかわからなかった。

サイクリストたちを横目にちょっと走ると、左に何やら倉庫のような建物があったのでちょいと失礼して目の前に停めて地図を再確認することに。すると倉庫の前に居た親爺さんと目が合い、ご挨拶。よく見るとそこは小さな柑橘の直売所だった。

親爺さんの他にはマダムが一人と、山本農園の主らしきお兄さんの計3名のお出迎えだ。3人の関係性は最後までよくわからなかったが、親爺さんが勝手に売り物のせとかを二個掴み、
「試食、試食!いいね?試食してもらっても!!」
とお兄さんの了承を取る前に我々にひとつずつ渡してくれた。「いやあ、いいんですか?すいません、頂きます」と有難く頂いた。それがみずみずしくて美味いのなんのって。大三島の道の駅で買った不知火とは比べ物にならない鮮度だ。外皮も極薄だし、身の皮なんてあんた、オブラートより薄い。
「最近雪が降ったりでやたらと急に冷えたから、味に自信ないんだ」とお兄さんは言うが、いやいやどうして。こちらのラインナップは、せとか・はるか・不知火の3種類で、せとかとはるかを頂くことにした。コンテナに入った柑橘たちはどういう料金体系かと思ったら、キロ売りだと言う。キロって4個くらいかなと思っていたら、お兄さんが網の袋に入れてくれたらそれぞれ6,7個にもなった。それでせとかが500円、はるかが400円という安さ。

ずっしりとした柑橘袋を頂き、さっき見逃したであろう架橋記念公園の場所を聞いてからお三方とお別れした。

無事公園の入り口に辿り着いて、いざ散歩スタート。

芝生の広場のみのシンプルな公園だったが、エルさんとしては嬉しかったらしく、

笑顔で歩いていた。


ついでに通りを渡った海側も歩いてみよう。

透明度が素晴らしい。
さて次いってみよう。

ちょっと走った先に素敵な地区があるようなので行ってみる。

無料の駐車場があるようだが果たして停められるだろうか。土曜だしな。

台数が少ないにも関わらず、あっさり停められた。素晴らしい。
ところでここはどこかというと、

古い町並みが保存されているという、御手洗地区だ。

北前船というと、北海道の松前にも行っていたヤツだな。
古い町並みということはきっと道が狭いだろうということで、二日連続でのカート出動だ。


案の定、道が狭い狭い。

しかし土曜だというのに、

観光客の姿はほとんど見当たらず、閑散としていた。

昨日の鞆の浦とは大違いだ。


旧越智医院という、淡いミントグリーンの渋い建物があった。それにしても今回、やたらと越智という苗字をあちらこちらで目にするな。
それもそのはず、

越智さんという名前のほとんどが愛媛県に集中している。厳密にはここは広島だが、ばっちり勢力圏なのだろう。

それにしても人が居ない。

人どころかクルマもほとんど走っていないので、これならカートじゃなくても良かったかな?

ま、嬉しそうだからいっか。

町並みにはミントグリーンの家がちらほら見えたが、ピンクのもあった。どことなくアメリ感な雰囲気もあるな。

また海へと戻って来た。



これにて御手洗観光を終え、再び島の北部へ向かう。

次に目指すはランチ場だが、

県道355号から内陸へちょっと入っただけで恐ろしく細い道になった。長閑なところで対向車がほとんど来ないからいいようなものの、これが関東だったらと想像すると恐怖に身が縮む。
ビビリながらも辿り着いたのは、

「まめな食堂」さんだ。


古くて趣のある建物は、

かつては病院だったそうな。

ランチメニューは二つっきりということで、一つずつ頼んでしばし待つ。
ご主人と思しき親爺さんがお茶を出してくれつつ
「毎日ありがとうございます」
というお言葉を頂いた。ん?初めて来たのに、、
「誰かご常連と間違えてんのかね?」と奥さんに言うと、
「『狭い道をありがとう』って言ってんでしょ!」と怒られた。
やばい、どんどん耳が腐っていくな。。。
そんな救いようのないやりとりをしていると、ランチが運ばれてきた。


ボリュームは無いが、素朴な味付けでどれも素晴らしい。特に卵とじの味噌汁に癒された。

ランチの後は次の豊島へと向かうが、その前にこちらの西側にも架橋記念公園というのがあるようなので行ってみることにした。
これまた最初通り過ぎてしまい、また戻ってきてコンパスを停めた。どうもこのとびしま海道の公園は、世間一般の公園のイメージを持って訪れると必ず見落とすくらいの小規模なもののようで、ここの駐車場も看板も何も無く単なる空き地みたいなものだった。

ここのウリはこの建築現場の足場、

ではなく、日本一のジャングルジムである。
以前はこれに登って絶景を楽しめたそうなのだが、安全基準を満たしていないとかで現在は使用禁止になっている。
近くまで行くにはどうすんだ?とキョロキョロすると、

上に登る階段があった。

これがやたらと急で、枝が張り出しており、

最後は階段とは呼べないようなワイルドな感じ。

ジャングルジムが使えないんじゃ用はねえ、ときっとほとんど誰も来ないのであろう。
しかし頑張って登れば、

そこには絶景があった。

裏手には公園っぽいところもあったが、

人っ子一人おらず、錆びれた遊具が物悲し気に佇んでいるだけだった。

お次は豊浜大橋を渡って豊島に入った。ここにはとびしま海道唯一のスーパーらしいスーパーのJAコープがあったので、夕食になりそうなモノをちょっと仕入れた。会計の際に不愛想なレジのオバチャンにダメもとで「現金だけですかね?」と聞いたみたら、手元に貼ってあったポスターをペラっとめくって「なんでもあるよ」とボソっと言った。見ると、QRも全て揃っているではないか。世の中けっこう進んできているのだな。

コープを出て島の北側を走るとすぐに豊島大橋に差し掛かり、渡ったところはもう上蒲刈島だ。

トンネルを通過し、

県道287号から左に入り、

海沿いに出てちょっと行ったところにあるのが、

「県民の浜」だ。ここはキレイなビーチに宿泊施設や飲食店、温泉まであるようなリゾート地で、大三島の土産物屋の親爺さんもオススメの場所だ。

90年代のドラマの舞台にもなったところらしい。今夜はこちらでご厄介になろう。
と、思いきや、トイレがThe 便所だった。キレイなトイレがあるとクチコミで見たような気がしたのだが、色々見過ぎてわからなくなっていたのかな。。
すぐ隣にふれあい広場という釣り人がワイワイ楽しんでいる出島のようなところがあり、そこもチェックしてみた。奇跡的に多目的の多少マシな洋式トイレがあることにはあったが、コンパスは通りに路駐という感じになり何となく落ち着かない感じだ。さて、どうしよう。
泊地が決まらないままとりあえず買い物にでも行こう。

今回この瀬戸内近辺では採石現場?をよく目にする。

やって来たのは島のほぼ西端にある、「ナチュラルベーカリーこはる舎」さんだ。

こちらで明日の朝のパンを仕入れる。

店の造りからパンのひとつひとつに至るまで全てが可愛らしい。いかにもロハスな雰囲気のマダムそのものだった。

再び県民の浜を目指して走り、

とりあえず風呂にでも入るべと、OPEN直後の「やすらぎの館」の湯に浸かった。600円のラドン温泉、なかなか気持ちよかった。
再び県民の浜の駐車場へ戻って色々検索した結果、

昼間走って来た豊島も飛び越え、大崎下島へ戻ることにした。


豊島大橋、豊浜大橋と再び渡り、日も傾く頃に到着したのが、

大崎下島の西海岸にある「大浜海浜公園」だ。

ここで車中泊をしたという人のブログを読んでやって来た次第だ。

ビーチにしてはまあまあキレイなトイレもあり、なかなか良さそうなところじゃないか。

広い駐車場にはポツポツと停まっているが、それらのオーナーらしき人間の姿は全く見えない。

やがて陽が沈んだ。

今宵のメニューは、豊島のコープで買ったゴボ天に出し巻き卵がメインで、後はトマトにギョニソに納豆という有り合わせのプアーさ。まあ、こんな夜もあらーな。

デザートは山本農園さんの柑橘だ。美味いなあ。

最後の散歩はしんと静まった真っ暗な闇の中だった。
旅は早くも折り返し地点、徐々に終わりが見えて来て寂しい限り。
本日の走行距離:62km (フェリー 8.5km)
