胆のう手術入院記 三日目 嗚呼、自由って素晴らしい

永遠にも感じられた長い夜がようやく明けた。

ただでさえウトウトとしか寝られないところに相部屋のお向かいさんの派手なイビキや咳で何度も叩き起こされたが、ようやく夜明けがやって来たのだ。

先ずは朝一で血を採られ、検査にまわされた。問題が無ければ、待ちに待った一昨日以来のメシにありつけるのだ。8時にはご近所が楽しい朝食にありつけていたが、こちらは水でガマンだ。

ふとテーブルの上を見ると何やら小瓶が置かれており、中にはエルブレのオヤツのウズラのビッツみたいなこげ茶の粒が入っていた。

9個もの胆石

回診に来た執刀医らしきちょっと野心でギラギラしている感じの青年医師に聞いてみると、やはり私の胆のうの中に入っていた胆石だった。小さいながらもなんと9個もあった。でもこいつらは脇役であり、あくまでも肝心なのは病理検査にまわされているポリープたちの方だ。そいつらの善悪の判定は2週間ほどかかるらしい。ちなみに執刀医らしき、というのは手下のイケメンは初日に挨拶に来たが、ギラギラは特に何も言ってこなかったがゆえである。

9時頃に検査結果が出て問題なしだったので、ちょっと遅めの朝食が運ばれてきた。

ツナサラダとヨーグルトはキンキンに冷えていたが、久しぶりの食い物だけに美味く感じた。パンはわざわざ温めなおしてくれていて有難かった。術後食欲の無い人も居るらしいが、難なくペロリと平らげた。

朝食が終わればもう後はどんどん歩けという指示だった。オペの際に腸管もいじくっているため、適度な運動をしないと腸閉塞のリスクもあるとのことだ。ということで、その前にようやく忌まわしき「お小水の管」を抜く時がやってきた。刺す時は全身麻酔で意識不明になった後なのでどうでもいいのだが、この抜く時が痛いと噂で聞く。クールで無表情な看護師さんが「ちょっと痛いですけどイッキにいきますよ」と言った途端にズボっと引っこ抜いてくれた。想像していたよりは痛くなかったが、尿道をガツンと刺激が走りしばらくは残尿感に耐えねばならなかった。膀胱はカラのはずなのに残尿感があるのだ。しかしそれよりもようやく管が外せたという解放感の方がデカかった気がする。

その後少しカラダを拭いてもらってから手術着を脱ぎ捨て、一日330円のレンタル病衣に着替えた。最初の歩行は看護師さんに付き添ってもらって、廊下をウロウロした。腹腔鏡を突っ込んだヘソ下のあたりがちょっとズキズキしたが、まあまあ普通に歩けているので後は自由にしていいとのことだった。病院内ではあるが、ついに自由を手に入れることが出来た。ただ、まだこの時点では点滴は付いたままだ。

点滴スタンドをコロコロ引きずりながら運動がてら1階のセブレブでコーヒーを買ってきて、昔で言う「談話コーナー」ですすった。セブレブの100円コーヒーってこんな美味かったっけ!?とビックリするくらい美味く感じた。自由って素晴らしい。

そんなことをしていたらあっという間に昼食タイムがやってきた。

朝食からまだ3時間しか経っていないので正直腹は減っていなかったが、食事が出来る喜びの方が圧勝しペロリと平らげた。大好物の麻婆豆腐は病院食だけあってラー油が赤く浮かぶような本格的なのでは無かったが美味しく頂けた。大体胆のうを取ったばかりのカラダにラー油なんて出るわけないしね。

昼食も終われば後は夕食までまったりと過ごすしかない。運動がてらたまに病室を出て院内をウロウロしていると、本日の我らの病室担当のハリセンボン春奈っぽい優しい笑顔の看護師さんに「お、いいですね!」と歩きを褒められた。もっと腰が引けてトボトボ歩く人も多いらしい。手術前にもらっていた痛み止めのロキソニンを朝食後に飲んだのが効いているのか、急ぎ足は無理だがゆっくりとならまあ歩けた感じだった。

お小水の管を抜いてから初の自然排尿を恐る恐るしてみたら、ビリビリとけっこう嫌な痛みが走りどうにも切なかった。やれやれ、これはいつまで続くのやら。しかも最後にプクプクとガスが出てきてたまげた。ケツではなくこんなところからガスを排出するなんて当然ながら生まれて初めての経験だった。膀胱に管を入れていた影響なのだろう。

この日の午後はこれといって観たい競技もなかったので、懲りずにタブレットを開いてどこでもDIGAを起動させてみると、初日とは違ってTVも録画も両方観れた。やはりその時によってアプリが不安定だったりするようだ。

異様に懐かしいサッポロの缶

こんな時は溜まっている寅さんだろうと、第五作「男はつらいよ望郷編」、第六作「男はつらいよ純情編」と立て続けにやっつけた。望郷編は我が故郷の北海道の昔の駅や海が映って何とも懐かしく、「額に汗して油にまみれて働くんだ」と散々言っていた寅がマドンナの長山藍子さんに勝手にフラれて結局はフーテン稼業に戻る、というのがこれまた何ともらしくて良かった。

最初誰だかわからず

純情編は昭和を代表するビッグネームである森繁久彌さんと若尾文子さんが出ているという豪華版だ。森繁さんは自分の中ではあの伊藤博文的な風貌しか知らなかったので最初は若すぎて誰だかわからなかった。何とこの時は57歳くらいと、今の自分とほぼ同じと知って色々な意味で愕然。

若尾さんはとにかく美しい。ルックスだけでなく、跪いて襖を開けてすっと立ち上がって出ていく、というようなひとつひとつの所作がとにかく上品でキレイだった。この時38歳。今の女優達が束になってかかってもまあ勝てないだろう。

寅さんを二本観て一息ついたあたりで本日の三食目の時間となった。

地味だったがシャケがなかなかしっとりと美味く、ペロリと平らげた。

夜は高梨沙羅ちゃんのジャンプやモーグル男子などを観ている間に、10時の消灯タイムとなった。モーグルの結果が出たのが21:59とまさにギリギリであった。

予定通りであれば明日はいよいよ退院だ。

エルブレはというと、今日もオヤジの不在など露ほども気にせず元気に散歩してメシを食ってスヤスヤと寝ていたようだ。

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