突然の戦力外通告

何年か前のJAバンクのTV CMは、日々淡々と業務をこなしながら何となく生きていた私の心に唐突かつ深々と刺さった。

そのCMは、どこかの会社の重役さんにとっての最終出社日に、クルマを用意致しますと言う部下の申し出を「もう、いいんだ」とどこか寂しそうに断り会社を後にした瞬間、一転して満面の笑みに変わり、ヘルメットを被ってロードバイクに跨り、

「さぁ、楽しい時間の始まりだ」

と言い残して颯爽とどこかへ走り去っていくという痛快な内容だった。

朝のワイドショーの時間に毎日流されるこのCMを観ながら、「今日で定年退職という日になったら、どんなに爽快な気分なんだろう」と、まだ10年以上先であるはずのその日を待ち遠しく楽しみに思っていた。いっそのこと一晩寝て朝起きたら60歳になってればいいのに、とさえ思いながら毎日通勤していた。何かにつけて、「あーー、早く辞めたい」と呟きながら同じような毎日を送っていた。

それから数年経った2020年も、突然世の中が大きく変わって通勤こそ無くなり毎日自宅での勤務となったが、まだ6年ほど先であろう定年退職を待ち焦がれながら働き続けていた。

そんな2020年の11月のある日、上司からリモート面談の案内が来た。最初は「最近の調子はどう?」などと他愛もない話からスタートしていたが、本題は「あなたの今担当している仕事は来年は無くなります」という話だった。

要するについに「戦力外通告」が私にも届いたのだ。

この上司を除き、部門内では私より年長者は2名で後は皆40代という「ベテラン部門」なのでいつこの手の話が来てもおかしくないと自分ではわかっていたつもりだった。がしかし、この2020年はこれまでのリーマン人生で最も忙しい年で、9月からは全社的な構造変革の極秘プロジェクトに入って毎晩のようにアメリカの親会社とのリモート会議に出席させられ苦手な英語漬けの日々を送ってきたので、あと3年くらいは大丈夫なのではないかと高を括っていた。

甘かった。そんな慈悲深い会社では決してないどころか、容赦なくクビを切られてきた先輩たちを山ほど見てきたというのに。

あくまで現部門での私の仕事が無くなるだけであって、もちろん他部門で引き取ってくれるところを探すという選択肢も無いわけではなかった。あーでもない、こーでもないと悶々と悩んだが、結局どこかへ異動してもそこでも遠くない未来にまた戦力外通告を受けるのは目に見えていた。うちはそういう会社なのだ。

最終的にはうちの奥さんの、「これまでよく働いたよ」「まあ何とかなるよ」という言葉に背中を押され、「退職する」と11月25日に上司に伝えた。他の仕事をするにしても、60歳から探すよりまだ頭もしっかりしている(と本人は思っている)うちの方が良いのではと思ったということもある。

そういうわけでJAバンクのTV CMのような永年夢見てきた晴れやかな退職ではなく、想像していたよりも数年早く、そしてリモートワークのためセレモニーもなく2020年の年末をもって新卒以来31年勤めた会社をひっそりと辞めた。

*ちなみに普通の送別会も無かったが、有志がリモート飲み会を年の瀬に開催してくれた。また記念品として、「私の好きなもの」ということで、プレデターのフィギュアとホッピー前掛セットを贈ってくれた。感謝。

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