4月12日(金)
「道の駅白沢」の朝が来た。
まさに無音。実に素晴らしい夜であった。FFを最小にしていたが全く動かずと、暖かい夜でもあった。
朝飯前のひとっ走りにランに行く。
ブレアはやる気満々だがエルはいまいちノリが悪かった。あと三本くらいやりたそうなブレアだったが切り上げてコンパスへと戻った。
昨日の夕方に川場で買っておいたパンを朝食に頂いた。スープもつけて我が家にしてはゴージャスなメニューとなった。このパン屋は店構えはオシャレなのに安めでしかも美味い。
食後はコーヒーなんぞ飲みながらのんびりまったり過ごす。今回の旅は、まあ言っても関東なんで前回の和歌山の時と違い、何か起きたらすぐ帰れる、というのが大きい。今んとこエルもブレアも元気だし我々もピンピンしてるので何も起きないとは思うが。
そうしているうちに10時になり物販がOPENしたようなので、出発前の散歩に出た。
この三角屋根の建物の中にはシンクがあり、かつては中で「適正に使えば」火器類を使用しても良かったらしいが、既に火気禁止となっていた。
ちょっとした公園もあり、左手に見えるトイレの上はなんと展望台になっているようなので行ってみよう。
ここでも満開の桜が拝めた。
最後に物販をちょいと覗き、
いちごのミックスソフトを頂いて、道の駅白沢を後にした。素晴らしい静寂度の道の駅だった。
明日の帰宅を考え、今日で群馬を終え埼玉へと入る予定だ。
途中、田舎の風景の中に何やら立派な野球場が忽然と現われた。「クライムスタジアムぬまた」という両翼100m、センター122mの堂々たるスタジアムのようだ。いかにも池井戸潤原作で日曜劇場の舞台となりそうな佇まいだった。群馬の潰れそうな社会人野球チームで、監督は役所広司、といった感じか。
やがて一昨日も通りかかった敷島公園が左手に見えてきた。まさに満開の桜、桜、桜だ。
先には群馬県庁も見えてきた。今日の昼はその前橋で群馬県民に大人気なあの店で頂こうと思う。
やがて辿り着いたのはこちら、群馬のソウルフード「シャンゴ」の前橋石倉店さんだ。
ケンミンSHOWなどでJOYや井森が熱く語っているのを観る度に、いっぺん行ってみてー、と思っていたがついに今日夢が叶う。
さすがは老舗、電子マネーはおろかカードすら使えないらしい。
ちょうどランチタイム真っ盛りだが平日だしすぐ入れるだろと思いきや、けっこう混んでいて20分くらい待ってから席に通された。
さあて何を食おうかとメニューを見て悩みに悩んだ結果、「シャンゴの原点」シャンゴ風とベスビオをチョイスしてしばし待つ。
シャンゴ風のカツはカリカリサクサクで美味い。ミートソースはちょいと味が濃いめかな。ベスビオは唐辛子マークが付いていたがまあきっと大したことないだろうと高を括って頼んだが、熱々も相まってけっこうガツンと辛かった。だが、ハフハフ言いながらも味は良く、具も盛沢山で美味かった。
それにしてもこちら、何がすごいって標準のSサイズで麺が150gもある。一般的な店で100g程度で、都内のちょいと気取ったところだとせいぜい80gくらいだろうか。オーダーの際に「Sでよろしいですか?」と聞かれ、危うくMサイズ(200g)にするところだった。150gもあると腹一杯になるし小食な人だと持て余すと思うが、周りを見渡すと我々よりもパイセンなご夫婦や若いお姉ちゃんたちも普通にペロっと平らげていた。群馬県民、恐るべし。
満腹で幸せになったところで、この旅最後の花見に出かける。
やって来たのは、初日に先ほどと二回も通りかかった「群馬県立敷島公園」だ。こちらをもって、今年の花見の打ち止めとしたい。
駐車場にコンパスを停めて散歩を開始し、先ず見えてきたのは「正田醤油スタジアム群馬」だ。現在J2の「ザスパクサツ群馬」のホームスタジアムである。我がコンサドーレも、来年はこちらでお世話になるのだろうか。。と思ったらザスパも今年は調子が悪いようで、もしかしたらすれ違いとなるやも。。
おや、ゲートが一か所開いているな。
ちょいとだけ失礼。
サポーターの声援が響く試合開催中のスタジアムももちろん興奮するが、無人の光景もまた良いものだ。スタジアムオタクとしてはたまらない。
反対側には飛び込み台もあるような立派な水泳場があった。
補助陸上競技場とサッカー・ラグビー場の間も桜が咲き誇っていた。
ちょっと風が吹くと見事な桜吹雪が舞う。
思わずヤラセでブレアの頭に一輪乗せてみたりして。
サッカー・ラグビー場の門もちょっと開いていたので、またまた失礼して。
こじんまりとしているがいい雰囲気だった。昔はザスパの試合をここでやる時もあったかと記憶しているが、最近はもっぱら正田醤油の方らしい。今はきっと社会人ラグビーやサッカーの下の方のリーグ戦や学生の試合に使っているのだろう。
補助陸上競技場はtotoの金で作ったのだろうか。そうだとすれば、私も過去にかなり支援しているということになるな。
最果ての野球場まで来た。ここまでが県の管轄で、この先の公園は前橋市の管轄に分かれるらしい。
市の公園にはボートの浮かぶ池があった。
この3日間でこれでもかってくらい桜を見た。もう腹一杯だ。
大満足で駐車場へ戻って敷島公園を出発し、初日に続いて「道の駅玉村宿」に寄って夕食を調達した。
玉村を出た後は「ガトーフェスタハラダ」でラスクを買いたい奥さんのために「道の駅ららん藤岡」に寄って、今宵のねぐらへ向かうべく埼玉へ入った。
やがて山あいの道になり、辿り着いたのは東秩父村だ。今宵はこの村にある「道の駅和紙の里ひがしちちぶ」でお世話になることにした。最初はこの隣にある「道の駅おがわまち」の「夜は全くの無音」というクチコミに魅かれたのだが、来年の3月までリニューアル工事中とのことなので「幹線道路から離れていて静か」とのクチコミの東秩父にしたのだ。
到着するとすでに人影もまばらで、エルブレに夕食を食わせた後に薄暗くなった駅内の探検に出てみた。
駅舎の裏手の案内板を眺めていると、向こうから「こんにちはー」と声をかけられた。「もう閉館ですよ」とくぎを刺されるとばかり思いきや、「もしかして○○ナンバーの人?」「今日は泊まりですか?」と聞かれドキリとした。
「はぁ。。」ととりあえず答えると、「車中泊ねえ、、あれホント困るんだよねえ、実際のとこ」とか言われるのかと若干身構えるていると、「どーぞどーぞ!ゆっくりしてってください!」とあっけらかんと言われて拍子抜けした。
そこからはこの、「真田丸」で真田家を支える忠臣を演じた俳優の中原丈雄さんと、
今は亡きチィチィを、
足して2で割ったような、この気の良さそうな親爺さんの独壇場が始まった。
「ここは色々見るところがあってね、良かったら案内しますよ。ささ、どーぞどーぞ」と言われるがままに裏へ裏へと連れて行かれた。
ここの駅舎は元々小学校とかで、この桜咲く広場は校庭だったそうな。
「研修会館」という看板がかかった建物は元々は和紙職人を養成する道場なのだが現在は職人がおらず、勿体ないのでセミナーや研修などに開放しているそうな。ちなみに一人前の和紙職人になるまでには15年かかるらしく、現在修行中の若者が2人居るとのこと。
どんどん暗くなっていく中、次に親爺さんに連れて行かれたのは立派な茅葺屋根の建物の前だった。これは元々和紙の工房だったのをどっかから移築したとのことだったが、「さてここでクイズです」と始まった。「茅葺屋根を葺き替えるにはいったいいくらかかるでしょう?」。。世界ふしぎ発見?
「500万くらいすか?」と答えたみたが、ブブー。なんとこの規模なら3,000万もかかるらしい。
このツアーもそろそろ終わりかな?と思いきや、いやいやどーして。次はここにある池の話題へと移った。池のメンテなどもこの親爺さんがやっているらしく、伸びた水草を刈ったりもするそうな。池にはソウギョと鯉が居るらしく、それも自分で放したとかなんとか。もしかして、駅長さん?
「こないだもここの駅長から電話が来て、『カワウが来て魚をみんな食っちまうんだよ』なんて言われて参っちゃってねー」。。あれ?あんた駅長じゃないんだ。。
「ところでアナタ、どちら様?」と言いかけたところでこの親爺さん、「申し遅れました。アタクシ、、」とおもむろに懐から名刺を取り出した。
自称「里山の宣伝マン」の足立宗助さんだそうな。ちなみにこのあだっつぁん、本業は重機のオペレーターらしい。
名刺も頂いたところで晴れてお別れかとばかり思いきや、あだっつぁんのトークはまだまだ終わらない。まさにノンストップトーキング。まだまだ話し足りないあだっつぁんに誘われるがままにバスの待合室に連れ込まれた。もう腹減ってんですけど。。
待合室に座るなり小脇に抱えたバインダーから取り出したるは、一枚の地図。なんとこのあだっつぁん、誰に頼まれたわけでもないのに(おそらく)、ここの道の駅からご自宅までの間に曼珠沙華(ヒガンバナ)を自費で植えたと言う。その数なんと150万球。残念ながら今はシーズンではないが、秋には見物客がわんさか来るらしい。しかも赤だけじゃなくて白い曼珠沙華も咲くそうな。「へーーすごいですねー」と写真を見ながら感服したが、「でもヒガンバナって毒があって犬には良くないんすよね」とは言えなかった。「ちなみに青いヒガンバナもあるんすか?」とも喉まで出かかったが、通じそうにないのでやめといた。
また上の地図の左上の部分に「地下水」とあるのは、あだっつぁんがこれまた高級車一台買えるくらいの私財を投じて60mほど掘って当てた地下水で、蛇口を三つもこしらえて近所の人などに無料で配ってるとのこと。
まだまだ話は終わらない。
次に出てきたのはあだっつぁん編集・発行の「アユ釣り紀行」の最終号だ。なんでもアユ釣りが趣味で、毎年釣果をまとめてはこのマガジンを発行して20年間色々なところに送りまくっているらしい。
その釣果というのも趣味のレベルではなく、年間2,000尾を超える年もあるってんだからもの凄い。プロに混じって数々の大会にも参加しているそうな。
とまあ、幅広く色々な活動をされているあだっつぁんだが、トークの間に何度も出てきたフレーズが「人生一度きりですから」だった。ホント、その通りだなと、つくづく思った出会いであった。
あだっつぁんほどアクティブに生きるのはちょっと無理そうだが、後で後悔しないよう今を生きよう。
やっと解放されてあだっつぁんのクルマが道の駅を出ていくのをホッとしながら見送り、ようやく夕食タイムが訪れた。
今宵は玉村宿で買って来たニラタマ、つくね団子、高菜チャーハンにゆでカキ菜というラインナップだ。
ハラペコも相まって全て美味かった。玉村宿の惣菜はやはりハイレベルだ。
そう言えばあだっつぁん、トークの中で「うちのアニキが、、、」ってよく言っていたなと思い出し、「東秩父村」のHPを何気に見てみると、
これ、どう見てもアニキじゃん。村のためにやけに自発的に色々やってるかと思ったら、やっぱ地元の実力者だなこりゃ。
すぐ隣のテニスコートで若い連中がいつまでもでかい声を張り上げてパコンパコンやってる音が山間に響くのをブレアがやたらと気にしていたが、それ以外はクチコミ通りの静けさだった。
「昨日言いそびれてたんだけど、、」とまた明日の朝あだっつぁんがやって来るのだろうか、と若干ビビリながら東秩父の夜は静かに更けていったのだった。
明日は東京へ帰ろう。
本日の走行距離:106km